制作について20

制作テーマは、美術作家にとって大切だ。

作品を発表していると、制作テーマについて説明を求められる機会も多い。

昔は、作品について説明することがすごく苦手だった。

作品がすべてを語ってくれたらいいのにとすら、思っていた。

自分が鑑賞者として作品を見る立場になると、

作家の説明によって作品理解が深まるという事実に気付く。

それ以降、なるべく自分の考えを説明するようにはしている。

いろいろな美術作家の制作テーマを知ると、幼少期の影響力の強さを感じる。

美術だけでなく、いろんなジャンルにおいてもそう感じる。

感受性が豊かな幼少期が一番、ものごとを真剣に見ているからなのかもしれない。

幼少期に貯めた感受性の貯金を使用しながら、大人は作品を制作しているのかもしれない。

私自身も、幼少期の体験が大きく作品に影響している。

無意識に作品を制作していたように感じていた部分も、実は影響があったのだなと最近になって気付く。

病気がちで孤独だった幼少期の体験が、自由さや力強い生命力を作品に求めている。

身の回りのものすべてに命が宿ったら、寂しくないのにな。

布団の中で天井を見つめて思考していた、幼少期の自分を思い出す。

やっぱり、私は楽園の世界を描こう。

自分自身が一番、自由に生き生きと楽しそうに暮らしている生きものたちの世界を見たいのだろうな。

現実がどれだけ閉塞的で不自由でも、作品の中では自由に生きられる。

だからこそ、私は作品制作にずっと魅了され続けているのかもしれない。